【登場人物】
でんりょクラゲ:フリー電力星からやってきた。なぜ日本では電力自由化がみんなに知られていないのかが不思議で仕方ない。
でんりょクラゲ父:でんりょクラゲと一緒にフリー電力星からやってきたお父さん。電力自由化についてなんでも知っている。
電太くん:日本人の男の子。最近テレビCMで聞いた「電力自由化」について興味を持っている。
フリー電力星からでんりょクラゲがやってきた
最近テレビのCMで「電力自由化」って言葉をよく聞くんだけど……
電力自由化って一体何なんだろう。お母さんやお父さんに聞いてもよくわからない。って言うし、誰か詳しく教えてくれる人はいないかなぁ
うわぁ、父さんの言う通り、僕らの星に比べて、電力自由化のことを知らない人が多いんだねぇ!!
仕方ないよ、私たちの星でも電力自由化が始まってすぐには誰も詳しいことを知らなかったんだから。特にこの国は本格的な電力自由化が始まったのは今年からなんだ、知らないのが普通なんだよ。
だけど、電力自由化を知ることで、より暮らしやすくなるんだ。電力自由化のことをあまり知らない人たちに伝えていくのが私たちの役目だろ?
君たちは一体誰だい?
僕たちはでんりょクラゲの親子だよ!
フリー電力星から、電力自由化についてみんなに教えるためにこの星にやってきたんだ!
よろしくね!
宇宙人ってわけか。初めて見たよ!僕は電太、よろしくね。
あぁ電太くん、よろしくね。
ところでさっき君は電力自由化について知りたい、って言っていたね。
私たちに何でも聞いてごらん。
スマートメーターの交換についてかい?それとも契約アンペア数の質問かい?それとも……
あの……実は……
電力自由化って言葉はで聞いたことあるんだけど、電力自由化が何なのかよくわからないんだよ。
まずは電力自由化が何か知りたいんだ。
えぇー!!!!! 電力自由化が何なのかも知らないの?
こら!そんなことを言っちゃいけない。さっきも言ったけど、今年始まったばかりの電力自由化、知らないのが当たり前なんだ。お前だって富士山の標高が何メートルか知らないだろう?電太くんは知ってるはずだよ。
誰にだって知っていることと知らないことがあるんだ。特に普段自分と関わりのないことほど知らないもんなんだ。
大切なのは、興味を持ったものについて、知ろうとすることだよ。
電太くんは興味を持った電力自由化について知りたいと思って私たちに質問しているだろう?これが立派じゃないか。
そうだね……ごめんよ、電太くん。
ううん。気にしてないよ!
それより、電力自由化がなんなのか教えてよ!
確か今年から始まったんだよね?
実は、1995年にスタートした電力自由化
電力自由化っていうのをどういう意味でとらえるか、っていうのが少し難しいんだ。でも広い意味で言うと、実は1995年に日本の電力自由化はスタートしているんだよ。
え!? 20年以上も昔の話じゃないか!だったらそれがどうして今更こんな話題になっているの?
それを説明するためには、日本の電力供給の歴史を知らなくちゃいけない。
そうだ、電太くん。日本で最初に電力会社が作られたのはいつ頃だと思う?
ちょっと考えてみてくれないか。
えーっと、発電とかって新しそうだし、結構最近だと思うんだよね。
でも20年前には電力自由化が始まってたんでしょ?
ってことは……30年前くらいかな?
ぶぶーっ!正解は、134年前だよ!
ひゃ、134年前!?日本の電気供給の歴史はそんな昔にまでさかのぼるんだ、知らなかった。
そう、明治15年に設立された、東京電燈という会社が日本初の電力会社と言われているんだ。
その後、次々と新たに電力会社が設立され、小売りのみをしていた会社まで含めると600社ほどにまで膨れ上がったんだ。
でも600社もあれば、当然つぶれる会社や、大きい会社に吸収される会社も多いよね?
その結果、1900年代の半ばには、もともと600社もあった電力会社はどんどん減っていって、たった5社で日本中の電力を賄うようになっていたんだ。
東京電燈、東邦電力、大同電力、宇治川電気、日本電力のいわゆる五大電力会社のことだね!
その通り!でもこの五大電力会社はそれぞれに配電施設を持っていて、日本という国全体で見るとまだまだ効率が悪くて、電気料金も高かったんだ。
国としてはこのバラバラな電力会社を一つにまとめてコストを削減して、電気料金を少しでも下げられないかということを考えていたんだけど、なかなかうまくはいかなかった。
ところがそうも言っていられない状態になるんだけど、電太くん、1941年に何が起こったかは知っているかい?
あっ!それは最近歴史の授業で習ったよ!えーっと確か、第二次世界大戦が始まった年だよね?
そうそう。よく知っているね。
で、エネルギー問題は国家存亡にかかわる危機だってことで、全ての電力会社は解散。日本の電力事業は全て政府の管理下に置かれるようになったってわけさ。
へぇー、でもそれってなんか自由とは真逆の方向に進んでるような気がするなぁ。
まぁまぁ、そう焦らずに。もうすぐ自由化の説明ができるからさ。
確かにこの頃は自由に電力会社を選べるどころか、電力会社が一つしかないような状態だね。
でも第二次世界大戦で日本は敗戦国となり、1950年に電気事業再編成が行われるんだ。
それ以来50年近く地域ごとに一社ずつ、合計10社の民間電力会社が、それぞれの地域で独占的に電力を供給するっていう時代が続くんだ。
電太くんの家はどの地域にあるんだい?
僕の家?僕の家は関西だよ!
じゃあ電太くんの家は関西電力から電気を買っているんじゃない?
すごい!当たってるよ!
今はまだほとんどの人が当時の電力会社のままだからね。地域さえ分かれば電力会社もわかるんだ。
でも、もうすぐ地域を聞いただけじゃどの電力会社から電気を買っているのかわからなくなる時代になるんだよ。
いよいよ電力自由化の話だね!
電力自由化の流れと正体
あぁ、その通り!
独占状態がずっと続くと、電力会社がどんなに値段を上げたとしても消費者はそこから電気を買うしかないよね。だって電気は絶対に使うし、その会社から買わないと他に買う場所はないんだから。
独占が危険なのにも関わらず、なかなか自由化は進まなかったんだ。
だけど諸外国はすでに電力自由化を始めていたし、日本もこのままじゃさすがにまずいよね、ってことでその10社以外も電力供給ができるように法律が整備されたのが、最初に言ったように1995年というわけなんだよ。
なるほど!電力自由化までの流れは大体わかってきたよ!
んー、でもそれならどうして20年経った今になって、こんなに話題になっているの?
個人が電気を選べる時代に
それはね、電力自由化って言っても、
当時は新規参入した電力会社が売れるのは、大型工場みたいに、大量の電気を使う、ごく一部の消費者だけで、一般家庭には売れなかったんだよ。
ほとんどの人には関係のない話だったからそんなに話題にもならなくて、新規参入しようにも初期投資にかかる費用に対して売ることのできる相手も少ないから、参入企業も少なかったんだ。
その基準は2000年、2003年、2004年、2005年に少しずつ緩くなっていったんだけど、それでも2007年の時点で新規事業者が占めるシェアはたった2%だったからね。
たったの2%!? そこからどうやって普通の家でも電力会社を選べるようになったの?
東日本大震災が起こった時のことを覚えてる?一部で電力供給が途絶えたり、計画停電なんかもあったよね?
東電の原発事故やその後の対応への不満、不信感から、自分たちで電力会社を選びたいっていう風潮が一気に高まったんだ。
そして今年の4月から規制が一切なくなって、ついに一般家庭でも電力自由化が始まったってわけさ。
なるほど!!
電力自由化は20年前から始まっていて、それが僕たち一般家庭でも始まったのが今年なんだね。
だから今年からこんなに話題になってるんだ。
そういうことだね、電太くん。
一般家庭にも電力供給ができるってことで、携帯会社やガス会社なども新規参入に乗り出したから、これからはもっと自由化が進むはずだよ。
そんな電力自由化について、これから一緒に考えていこうね!