[登場人物]
でんりょクラゲ:値上がりには断固反対するクラゲ
でんりょクラゲ父:値上がりするとその背景を考えるクラゲ
電太くん:値上がりに気づいていない小学生
電気料金は年々上がっている
ある夏の日
今日もあっついなぁ、とけちゃいそうだよ。
ほんとほんと、地球の夏はどうしてこんなに暑いんだろう。
こんな日は冷たいアイスを食べるに限るね。
よし、でんりょクラゲ、コンビニにアイスを買いに行こう!
でも、僕は地球のお金を持ってないよ?
僕に任せて!
えーっと、今は120円持ってるから、ガリガリ君なら一本ずつ買えるよ!
やったぁ!!じゃあさっそく買いに行こう!!
・・・
あれ、1本70円に値上がりしてる……
えぇー!!!じゃあ食べられないじゃないか!
おや、電太くんとでんりょクラゲ。
何やら頭を抱えているけどいったい何があったんだい?
お父さん!!実はアイスを食べようとしたんだけど、値上がりしてて買えなくて……
そうか、じゃあここは私が買ってあげようじゃないか!
やったぁ!!お父さんありがとう!
ありがとう!!(でんりょクラゲのお父さんはどうして日本のお金を持ってるんだろう……)
でも最近どこも値上がりばっかりしてるよね、お小遣いの少ない僕は困っちゃうよ。
値上げして儲けようってことだよね、なんだかずるいなぁ。
値上げっていうのは何もずるしてお金儲けをしようっていうようなものじゃないんだ、どこの会社にも事情があって仕方なく値上げしてるんだよ。
電気料金だって最近値上がりしているだろう?
電気料金が値上がりする理由
そうだったんだ!全然知らなかった。それにも事情があるの?
もちろん電気料金の値上がりにも他の商品と同じように事情があるんだよ。大きく分けると、「原子力発電所の停止」と「燃料費の高騰」が理由だね。
原子力発電所の停止
まず一つ目に原子力発電所の停止について説明するよ。
東日本大震災の原発事故をきっかけに、一度すべての原発が停止されたよね?2015年から一部の原発は再稼働を始めたんだけど、それでもほとんどの原発は停止したままなんだよ。
原発が使えない以上、火力発電でその分を補わないといけないんだけど、火力発電と原子力発電の発電コストを比べてたら、火力発電の方が十倍くらい高いんだ。
だから原発が稼働していた時と比べると電気料金も値上がりしてしまうんだよ。
停止した原発でも冷却のために稼働し続けなくちゃいけないから、今は停止した原発を安全に維持するために火力発電で作った電気を使用している状態だもんね。
じゃあ原発が再稼働すれば電気料金は値下がりするの?
今の電気料金を、原発再稼働を前提に設定している会社は別として、原発が再稼働すれば電気料金は下がると思うよ。ただ、安全面と経済面は単純な比較はできないから再稼働させるべきかどうかはここでは触れないでおこう。
それは地球に住む人々が考えて議論を重ねた上で決める問題だからね。
ここでは事実として、電気料金が値上がりした理由の一つに原発の停止があると言うだけにとどめておくね。
燃料費の高騰
次に燃料の値上がりについて説明するよ。
電気を作るためにはいくつか方法があって、日本では主に火力発電が用いられているんだ。それで、火力発電のために燃料が必要なんだけど、その燃料だって商品なわけだから、当然価格も変動するよね?
ここ数年は石油や石炭の価格が値上がりしているから、電気を作るのにお金がかかる。そうすると結果的に電気料金も値上がりするってわけさ。
あれ?でもそれは燃料費調整制度があるよね?
また難しい言葉が出てきたね、燃料費調整制度ってのは何だい?
電気料金は毎月固定の基本料金と、電気を使った分だけ支払う電力量料金を足した金額だってのは前に説明したことがあったよね?
でもそれに加えて、燃料輸入価格(全国平均)の変動に合わせて毎月自動で調整される「燃料費調整額」っていうのも本当は電気料金を決める上で計算しないといけないんだ。
図に表すと……
こんな感じなんだけど、燃料費調整額は電力量料金とは別で、燃料費が高いんだったらここで調整されるでしょ?電力量料金が値上がりするのはおかしくない?
でんりょクラゲの言う通り、確かに燃料調整制度はあるね。
そもそも電気料金を変えるのはスーパーやコンビニの商品の値段とは違って、各電気会社が勝手に決めていいわけじゃないんだ。
燃料費は毎月のように変動していくけど、電気料金を変えるには経済産業省に申請して認可をもらわなくちゃいけない。
じゃあ毎月申請するのかっていうとそんな面倒くさいことはしてられないから、燃料費の調整は日本全体で一律にやってしまいましょう。っていう制度なんだ。
ただ、さっきも言ったように原発が停止した分は火力発電で補わないといけないよね?
燃料費調整制度は総発電量の変化まではカバーできないから、その分は電気料金自体の値上げで対応せざるを得ないんだ。
燃料費の高騰による影響が直接あるのは燃料費調整額の方だね。でも結果的に毎月支払う電気料金は値上がりしてると言えるよ。
今後、電力自由化でどうなる?
どこの会社も大変なんだね。原発が停止してからはどの電力会社も赤字で苦しんでいるんじゃない?
ところが、そうでもないんだ。この表を見てくれ。
これは昨年度の電力会社の決算なんだけど、電気料金を値上げしたこともあって、どの電力会社も黒字になっているんだよ。
売上19兆円!?こんなに儲かっているのにまだ値上げするなんてひどいよ……
東日本大震災以降赤字になってしまった電力会社も多くて、そこからの全社黒字転換というのは、もちろん各会社の企業努力によるものではあるんだけど、それぞれの会社に余力が出てきたと言えるよね。
そっかぁ、でも去年はまだ電力自由化が始まってなかったからこんなに黒字ばかりだけど、今年は新規参入の電力会社に契約を奪われてちょっと危ないかもしれないね。
ところが、電力自由化が始まって半年ほど経ったけど、きちんと電力の市場に入り込んで争えているのは東京ガスくらいで、多くの新規参入会社はまだ大手の売り上げに影響を与えるほどの契約はとれていないんだよ。
電力自由化が始まった当初は価格競争に参加しなくてはならないかもしれないと思っていた大手が安心しているところなのかもしれないね。
じゃあ電力自由化が始まっても今までのように電気料金は上がり続けるってこと?
それはわからないよ。このままでもいつか電気料金は下がるかもしれない。
ただ、一つ言えるのは余裕が出てきた各電力会社も、もし新規参入の会社が市場で戦えるようになれば、価格面でも競わなければならないようになるだろうということだね。
僕たちがこのままぼーっとしてたら、電力自由化が始まったのにそのメリットを自分たちでつぶしちゃうかもしれないのか……。
市場を動かすのは電力会社だけじゃなくて、消費者にもゆだねられてるってことだね。うむうむ。
・・・完。